きものができるまで

名古屋帯の仕立て方 〜マニアックでごめんね!〜

 

こんにちは!
上杉惠理子です。

 

今日のこの記事では
名古屋帯の仕立て方
をテーマにお届けします^^

 

というのは2019年末頃
こんなご質問をいただきました。

 

新しく仕立てた名古屋帯が、
胴に巻く部分がずっと縫われていて
着るときに、帯板が挟めません。

帯板が落ちそうで心配なので
これは縫い目を
ほどいてもらった方がいいのでしょうか??

 

この質問には


「ほどかなくていいんです!
というか、ほどいちゃダメ!!
名古屋仕立て、という仕立て方なの!
帯板は、一巻き目と二巻目の間に挟んで
きっちり締めれば落ちないから大丈夫!!」

…と、お答えしました。

 

 

和創塾のグループレッスンの中で
この帯の仕立ての話もするのですが
ブログでも書いてみようかなと
このご質問を頂いて思ったんですね。

 

 

この話をすると
ご質問くださった方の

「なんで帯板が落ちるかもしれない
 仕立て方にしちゃったんだろう?」

というモヤっとしたお気持ちにも
お答えできるかと^^

 

きものデビューはこれからの方には
「なんのこっちゃ??」
という話かと思いますが…
へぇ〜帯もいろいろあるのね
とサラリと読んでいただけたらうれしいです^^ 

 

 

まずは女性の帯の種類から復習♪

女性のきものの帯には

・袋帯
・名古屋帯
・半幅帯
・兵児帯

とあります。

 

半幅帯は浴衣のときによく締めるもので
(浴衣以外も通年締められるんですけどね)
幅16cm程度の細めの帯。

兵児帯はもともと子ども用のふわふわ帯で
大人向けに今種類が増えています。

 

袋帯はお祝い用に締める柄も豪華な帯で
幅約30cm、長さ420〜450cmほどあります。
長いので、自分で締めるなら二重太鼓。
振袖のときのように
華やかな飾り結びにもできます。

 

で、日常に きものを着こなすとき
ベースとなる帯が、名古屋帯。
幅約30cm、長さ360〜380cmと
袋帯より短いので、一重太鼓に締めます。

 

 

 

今日はこの名古屋帯の
お話をじっくりお届けします^^

 

これもそれも名古屋帯なのです♪

 

普段着のきもので
よく締める 名古屋帯。

 

お祝いの袋帯よりも
軽くて締めやすく、

浴衣などによく締める半幅帯よりも
お太鼓に締めてきちんと感が出る。

 

名古屋帯は
胴回りは帯を縦半分にした

幅15cm前後で二巻して

 

背中はもともとの帯幅30cmのまま
お太鼓に締めるわけです。

 

素材も柄も色も
本当にいろいろな名古屋帯があります。

 

 

この名古屋帯、
仕立て方で分けると大きく3つあります。

写真右から順に…
 ①開き仕立て
 ②松葉仕立て
 ③名古屋仕立て

3本とも名古屋帯なので
幅30cm程度、長さは360-370cmほど。
締め方も同じです。

ですが、お仕立ての仕方が
ちょっとずつ違うんですね。

 

順番にまずお話しすると…

 

名古屋帯の仕立て方①  開き仕立て

幅30cm程度、長さは360-370cmの
帯地 がそのまま開いたままのもの。

この帯を締めるときは
片方の先を半分に自分で折りながら
2巻、胴に巻きます。

 

なので、写真手前側に
私がばっちり折った折り目が
残っていますね^^ 

 

締めた正面がこんな感じですね♪

 

 

 

 

名古屋帯の仕立て方② 松葉仕立て 

 

松葉(まつば)仕立ては
基本は、①開き仕立てと同じですが

締めるときに二つ折りがしやすいように
先だけ縫われているのがポイント♪

 

帯地によっては
自分で折りにくいものもあって
そういうときに松葉仕立てで
先だけでも縫われているととても楽!

 

 

 

① 開き仕立て と
② 松葉仕立て  の帯は
自分で二つ折りにしながら締める。

そして、必ず折り目が
自分の下になるように締めるので

↑  こんなふうに 帯板を
折った帯地の間に入れることができます。

ここに帯板を入れれば
帯板が下がってきて
帯の下から見えちゃうこともないですね♪

 

帯板以外にも
ちょっとした小物が挟めるので、
呉服屋さんのスタッフの方などは
帯にペンやメモ帳やスマホや
いろいろなものを挟んでいます。
ドラえもんのポケットみたい♪

 

 

名古屋帯の仕立て方③名古屋仕立て

そしてこちらが名古屋仕立て。

胴に巻く部分が
最初から全部二つ折りになって
縫われています。

 

「折りながら」巻く必要がないので
締めるのは結構楽ですね〜^^ 

 

 

避けて通れない…九寸と八寸のお話

 

さて、
この3つの仕立て方がある
名古屋帯。

 

どの仕立て方にするか
を決めるのは
締める人のお好み…の前に
帯地の特徴に依ります。

 

 

名古屋帯の帯地は
大きく分けて

九寸名古屋
八寸名古屋

があり、

 

九寸名古屋 
 = ほぼ③名古屋仕立て

八寸名古屋 
 = ほぼ①開き仕立て
 (ときどき②松葉仕立て)

 

となるんですね〜〜

 

 

名古屋帯が
もともとどうやって
売っているかというと…

呉服屋さんに行くと
きものと同じように
くるくる反物の状態で
棚に置かれています。


 *イメージ

 

 

帯にもお仕立てが必要で
仕立てる前の
反物の状態で販売するわけです。

 

※最近は、仕立て上がった状態で
 販売されている帯も増えましたが
 高級なものほど
着る人のサイズに合わせて反物で販売します。

 

で、この巻いた反物状態の帯。

 

よく呉服屋さんに
こんな札がかかっているんです。

 

こっちは

「八寸(はっすん)名古屋帯」

 

そっちは

「九寸(きゅうすん)名古屋帯」

 

 

八寸名古屋帯

九寸名古屋帯

何が違うかというと
反物の幅が 九寸の方が 長いのです。

 

この「寸」というのは
「尺貫法」の「鯨尺(くじらじゃく)」

1分 = 約0.38cm
1寸 = 10分 = 約3.8cm
1尺 = 10寸 = 約38cm
1丈 = 10尺  = 約380cm

…という
和裁の世界で今も使われている
長さの単位です。

 

 

1寸 は約3.8cm。
一寸法師の「寸」というと
少しわかりやすいでしょうか?^^

 

まずはここで
「寸」は長さの単位で
だいたい小指1本ぶんくらい
と思っていただければ十分!

 

 

で、

八寸名古屋帯

  と

九寸名古屋帯

 

小指1本分、
約3.8cm長い九寸名古屋帯。

この長い分の約3.8cmの幅は
何のためかというと…

縫い代 をつくるため。

 

 

着られるようになった
仕立て上りの帯は
どちらも同じ、
八寸  = 約3.8cm ✖︎ 8=約30.4cm
の幅になるわけです。

こちらの赤い名古屋帯は
もともと八寸の幅で織られた
八寸名古屋帯。


縫い代がないのがわかりますか?

↓こちらも八寸名古屋帯です。

そして
これが九寸名古屋帯。
  ▼▼

九寸名古屋帯は
もともとの布が
やわらかいのです。

ふにゃふにゃ〜
きもの地と同じだったりします。

なので、
中に帯芯を入れないと
帯にならない!

だから、帯芯を入れて
縫い閉じるための 縫い代が必要なの。
縫い代分、1寸=約3.8cm分長いから
九寸名古屋帯と呼びます。

 

八寸名古屋帯は
生地がしっかりしているので
帯芯を入れずに
そのままで帯になるので
縫い代が要らないわけです。

 

 

着る側の立場からすると
どちらも仕立て上がれば同じサイズですから

八寸名古屋帯、
九寸名古屋帯、
と別に呼び分けしなくても
いいんじゃないかなーと思うのですが

 

今も、呉服屋さんに行くと
結構使われているんですね。

 

 

で、なが〜くなりましたけど!!

 

九寸名古屋帯
 = ほぼ③名古屋仕立て

八寸名古屋帯
 = ほぼ①開き仕立て
 (ときどき②松葉仕立て)

 

になる!!

 

開き仕立て&松葉仕立てにする良さ

 

八寸名古屋帯は
しっかりかための生地で
芯を入れなくても
そのまま帯になります。

 

なので、最初から
最終的な帯の幅8寸で
布ができています。

 

1寸=約3.8cmなので
8寸は 8掛けをして約30.4cm。

 

 

八寸名古屋帯は
芯を入れずに
そのまま帯になるので

開き仕立て

または 

手の先だけ縫った
松葉仕立てにします。

 

なぜ、八寸名古屋帯は
名古屋仕立てにしないのでしょう?

 

体に巻く部分を最初から二つ折りにして
縫い閉じてしまう名古屋仕立て。

 

折りながら巻く、
という手間がなく締めやすいので
八寸名古屋帯を
名古屋仕立てにしても良いのですが…

 

 

名古屋仕立てにしたら
縫い閉じる長さが多くなり
仕立て代のコストがかかる!

 

 

だから八寸名古屋帯は
通常、名古屋仕立てにしないのです。

 

 

開き仕立てにするメリットは
仕立て代のコストが下がる
という以外にもいくつかあります。

 

・開いてたためるので
 たたみ方が簡単

・帯板を挟んでも
 落ちたりずれたりする心配が全くない

・自分で二つ折りにしながら
締めることができるので、

 背が高い人は、帯幅を広げて
バランスよく締めることができる!

 

最後のポイントは
結構大事だったりします。

 

身長170cm以上ある方だと
真っ二つに折って締めた15cm幅だと
身長に対して帯が細く
ちょっと頼りない印象になるんです。

 

なので、
長身の方は少しずらして二つ折りにする。
帯幅を16〜16.5cmくらいに
広げて締めると帯の存在感が出るのです。

 

 

というわけで

八寸名古屋帯
 = ほぼ①開き仕立て
 (ときどき②松葉仕立て)

となります♪

 

わざわざ名古屋仕立てにする理由。

 

さていよいよ今回の記事も
ラストスパート!^^ 

 

九寸名古屋帯
 = ほぼ③名古屋仕立て

にするんだよーというお話です。

 

 

九寸名古屋帯の帯地は
ふにゃふにゃ柔らかい生地です。

 

というか、
もともと きものや羽織だった生地で
作ることもあります。

 
↑この帯は、もともと
きものの反物だったもので羽織を作り、
その余り布で名古屋帯にしています。
(詳しくはこちら>>https://test.kimono-strategy.com/?p=2551

 

 

九寸名古屋帯はこんなふうに
ふにゃふにゃ柔らかいので
帯として締めるために
【芯地】を入れて仕立てます。

 

 

帯の仕立て屋さんによる
帯の芯地の素材タイプについての
マニアックなブログを見つけたので
リンクを貼っておきますね。
https://shitate.org/obishin-type/
帯芯もいろいろ種類があるのね…!!
ご興味ある方はぜひ!

 

 

さて。

 

それではなぜ
生地がふにゃふにゃな九寸名古屋帯を

胴に巻く部分が二つ折りで仕立てた
名古屋仕立てにするのか。

 

 

その理由は…


使う帯芯の量を

最低限にしたいから!!

 

九寸名古屋帯を
開き仕立てにしたら…

胴に巻く部分に
2倍の帯芯が必要になる、
ということなのですが…想像つきます??

 

 

しかも、裏地生地も
2m以上さらに追加で必要になります。

 

 

帯芯や裏地を減らしたい理由は
コストの問題もありますが
何よりも、締めやすさのためです。

 

 

帯芯が2倍になったら…
身体に締めたときに
分厚くなって、重い!!!

 

 

気軽にさらりと締められるように
名古屋仕立てになっているんですね♪

 

 

 

ちなみに、九寸名古屋帯も
開き仕立てにすることがあります。
(これを「京袋帯」と呼ぶこともある。。
 ややこしい!!)

 

 

九寸名古屋帯を開き仕立てにすると
締めたときに厚さができるだけ出ないよう
薄い帯芯を使うことが多い。 

 

 

私もひとつ京袋帯を持っていますが…
ちゃんと帯芯が入ってるのか!?と思うほど
柔らかくて…締めにくいのなんのって!!笑
(色と柄はお気に入り❤︎)

  

他にも名古屋仕立てにする良さは

・最初から二つ折りになっているので
 締めるときにサッと巻ける

…ということでしょうか。

 

 

ちょっと変わった形なので
たたみ方に迷われる方もいますが、
平らになるように、
締めたときに見える部分に折り目をつけないように
たためば良いだけです。

 

名古屋仕立ての名古屋帯の
たたみ方はこちらの動画をどうぞ!
  ▼▼

 

 

名古屋帯は仕立て方も、色・柄・素材もいろいろあって楽しい!

 

名古屋帯の仕立て方。

いかがでした??^^ 

 

こうして仕立て方が変わるのは
名古屋帯だけなのです。

 

華やかな織の袋帯は
みんな開き仕立てで仕立てますし、
半幅帯も仕立て方はひとつですよね。

 

それだけ名古屋帯は
バリエーションが広い帯
ということだと私は思っています^^ 

 

 

帯にもいろいろあるんだなー
と思っていただけたら嬉しいです^^

 

 

マニアックな話に
おつきあいくださり
本当にありがとうございました!!

 

和創塾
〜きもので魅せる もうひとりの自分〜
上杉 惠理子


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